データや写真も断捨離®を。「デジタル生前整理」のススメ
コラム デジタル生前整理について
みなさんは「デジタル生前整理」という言葉をご存知ですか?
「生前整理」は一般的になってきましたが、「デジタル」生前整理とはどんなものなのでしょうか?
そこで今回も、遺品整理・生前整理のプロ、大橋運輸株式会社(愛知県瀬戸市西松山町2-260)さんにお伺いし、2年前に立ち上げたデジタル整理部門の、岡田桃歩(とうあ)さんに、定義や実際の方法、私たちが今できることなどについて伺ってきました。
1.デジタル生前整理は、地図のない宝探しのようなもの
--「デジタル生前整理ってピンとこないのですが、どんなものなのでしょうか」
岡田さん(以下敬称略)「確かに耳慣れないですよね。
対象になるものをお伝えするとわかりやすいかもしれません。
具体的には、以下の中に入っている写真やメールを整理することです」
・パソコン
・スマホ(ケータイ)
・デジタルカメラ
・USB
・その他クラウドなど
--「なるほど。個人のプライバシーに関わるものを整理するんですね」
岡田「はい。メインは写真やメールや連絡先ですが、今はSNSやLINE、ネットバンキングなどもその中に含まれます」
--「挙げてみるとけっこうありますね」
岡田「そうなんですよ。特にお金が関わるものは要注意です」
--「最近だとネットでやりとりできますからね」
岡田「例えばFXで利子がついている場合だといいんですが、マイナスの要素もあるんです。
知らないうちに借金になっているケースもありますから」
--「アプリの課金も危険な感じがします。パスワードがないと永遠に損してしまいますね」
岡田「そうなんです。
だからこそ、『生前』にやっておかないといけないわけなんです」
--「ここでつながるんですね!」
岡田「デジタル整理は『地図のない宝さがし』と言えますね」
--「目に見えないので、まさに宝探しをするようなものですよね。
今の私ですら、自分がどこにどんなデータを持っているか、すべて把握していません…」
岡田「モノと違って、増えたら部屋が狭くなるわけではないので、増えてもわかりづらい。
それがデジタル整理の難しいところで、通常の生前整理より難易度が高いんです」
2.お金の流れ&交友関係がわからない、SNSの乗っ取りが、3つの大きな危険要素
--「パスワードがわからないと、そもそも物理的にスマホやケータイが開きませんよね」
岡田「はい。特にアップル製は以前はパスワードが分からなくても解除できましたが、今は一切できません」
--「ではログインできないことで、具体的にはどんなことが困りますか?」
岡田「大きく分けて3つあります。1つ目がお金の流れがわからないこと」
--「いくら入ってるかわからないし、もちろん引き出せないですもんね」
岡田「配当金が受け取れなかったり、逆に永遠に課金されていることも」
--「それは困ります」
岡田「2つ目は、交友関係がわからないことです」
--「昔は手帳にメモしていましたが、今はスマホに全部入っていますもんね。
そういえばスマホを落としてしまい、大変な目に遭った映画もありましたよね」
岡田「はい。スマホはプライバシーの塊ですから。
変な話ですが、ご本人に何かあったことを伝えたいのに、誰に伝えていいのか全くわからないこともあります」
--「進学や就職などで地元を離れてしまったら、その後の人間関係をご家族が把握するのは難しいですね」
岡田「ええ。そして最後がSNSです」
--「いろいろな意味で複雑そうです」
岡田「最も恐いのはなりすましですね。放置されているうちにアカウントを乗っ取られ、トラブルに巻き込まれていることがあります。親しい人に迷惑をかけることにもなりますからね。」
--「こうして具体的なトラブルを見ていると、家族にパスワードを伝えておかなければと思いますね」
岡田「もしもの時にはここに記入してある、ということを伝えておくだけでもいいと思いますよ。
あまり喜ばしくないことですが、facebookでは事前準備によって追悼アカウントにすることもできます」
--「スマホのパスワード、SNSのパスワード、どんなアプリが入っているか…改めて見てみると、自分のプライバシーってけっこう広範囲になるんですね」
3.実際の作業は、所有物およびデータの確認
--「さて、デジタル整理の複雑さが十分身に沁みましたが、実際の作業というのはどのように進めるのですか?」
岡田「手順はシンプルで、①どんな所有物があり、②どんなデータが入っているかを確認することの2つですが、奥が深いので基本的には生前にやっておきたいところですね」
--「確かに、人によって違いそうです」
岡田「ご本人さんがいらっしゃれば、通常の生前整理と同じで、一緒に『要る・要らない』を判断しながら、捨てるものと残すものを明らかにしていきます」
--「データは一瞬で消えるので、自分でもこまめに捨てるといいですね」
岡田「ええ。判断しにくかったら、いったんUSBに保存しておいて時期が来たら捨てるなど、そのあたりは紙の書類と一緒。日付を入れて期日が来たら消します」
--「他にはどんな整理術がありますか?」
岡田「こちらには写真の仕分け用ソフトもありますので、例えば日付ごとの整理だったり、人が映っている写真だけを残すなんてこともできますよ」
--「スマホやパソコンのお店じゃないのに、そんなことまで!」
岡田「私たちが引っ越し業務の中で、生前整理や遺品整理をするようになったのと同じように、デジタルというものを介して、お悩みを解決していけるようになれたらと思っています」
4.日常的にやっておきたいこと、そしてデジタル生前整理の今後とは?
--「ところで、現在はどんなお仕事・活動をされているんでしょうか?」
岡田「実はまだ、デジタル生前整理というのはメジャーではありません。
遺品整理に携わる中で、デジタル生前整理が必要になっていくと感じてきたので、お引越しや生前・遺品整理の際に、都度ご提案している状態ですね」
--「高齢者の方はデジタルには疎いので、大変なのではないでしょうか?」
岡田「いえ、むしろ逆なんです。
高齢者の方はデジタル機器を敬遠しがちで頼ることが少ない分、持っているデータもあんまりないんですよ。
ですから、スマホが使いこなせる世代以下の人全てに必要になると思います」
ーー「だいたい50代の方より下の年代になりそうですね。
プロから見て、日頃からしておいた方がいいことはありますか?」
岡田「何をおいてもパスワードです!
これがないと何ともならないので、スマホやパソコン、アプリやSNSなど、対象ごとにパスワードを明記しておきましょう」
--「そして元気なうちにデータもこまめに消去」
岡田「お部屋の生前整理と同じで、終活に向き合う方だけでなく、10代でも20代でもやっておく必要があると思いますね」
--「作業が複雑だからでしょうか」
岡田「複雑だということもありますし、若い方はデジタルの情報を多く持っていますよね。遺品にならずとも、万が一の紛失や、データ破損に備えておくべきだと思います。スマホを水没させたら、数日立ち直れないですよね。」
--「確かに、情報を多く持っている人ほど、日頃から整理しておく必要がありますね。」
岡田「そういう意味でも生前にしておきたいんですよね」
--「今日お話を伺い、デジタルも生前整理が必要なことを実感しましたが、啓蒙活動などはされているのですか?」
岡田「まず、こうしたサイトで大切さを広めていくということと、高齢者に応対されている方、例えば福祉関係のスタッフさんに対してセミナーを行っています」
--「断捨離®とかシンプルライフというのはだんだん根付いていますけど、これもそうなればいいですね」
岡田「そうなんですよね。
最近はミニマリストさんが増えていますから、デジタルのミニマル化も広めてくれたらありがたいですよ」
--「デジタルと聞くと身構えてしまうので、プロの方が定義やシステムをしっかり伝えてくれると助かります」
岡田「保険やITと同じで、大切なのはわかるけれど、存在がわからない…みたいなところはあります。
だからこそ私たちのような専門の人間とともに、理解してもらえたら嬉しいですね」
--「今後はデータもどんどん多様化し、量も増えていくでしょうから、データと一緒に歩くことになりますからね。
最後に、今後の夢や目標をお聞かせください」
岡田「先程もお伝えしましたが、引っ越し業務から生前・遺品整理のご相談を受けたように、デジタルに関しても、気軽に相談できるような存在になれたらと思っています。
ですから、普段から「スマホを使ってこんなことをしたい」とか「デジタル決済はどうすると安全か」といったお悩みに応えていきたいです。
--「特にご高齢の方にとっては、心強い存在ですね!」
岡田「ありがとうございます。
デジタル整理は、想定できるものが莫大ですし、モノの整理以上にご要望が異なります。
ですから初回のご相談は無料でさせてもらい、お一人お一人のご要望を伺い、都度需要に応えながら『大橋運輸のデジタル生前整理の形』を作っていけたらいいなと思います」