防災月間に意識したい「生前整理」。実は「防災・防ケガ」に繋がるんです!
コラム 生前整理について
9月は防災月間。
大正12年9月1日の関東大震災を忘れないために「防災の日」が制定され、毎年、さまざまな啓蒙活動やイベントが開催されます。
そして実は「生前整理」が、防災・ケガ防止にかなり重要だということをご存知ですか?
そこで、今回も生前整理のプロとして地元で活躍する、大橋運輸さん(愛知県瀬戸市西松山町)を訪ね、これまで約200件の生前整理の現場に携わり、防災士になるべく学びを深めている、担当の松下壱成(いっせい)さんにお話を伺いました。
生前整理は、毎日を快適に安全にさせるためのもの
引用元:https://www.photo-ac.com/profile/43626
--「生前整理というと『いつかの日のために、周辺を整理する』という印象があるのですが…」
松下さん(以下敬称略)「まだ、そういうイメージはあるかもしれませんね。
でも最近は『より快適に生きるために、家の中を整える』という意識に変わってきているんですよ」
--「『断捨離®』の感覚に近くなっている感じでしょうか?」
松下「はい。プロのサポートで捨てるものと残しておくもの整理し、暮らしの質を上げるためにするのが目的なんですよ」
--「遺品整理とは目的が違うんですね」
松下「ええ。ただ、作業工程は遺品整理と同じなんです。
とはいえ、遺品整理は空間まるごと整理しますが、生前整理は片づけながら行うので、時間は3倍くらいかけますね」
--「住人の方も、何が出てくるかわからないこともありそうですね」
松下「そういうことはよくあります。
私たちが本格的に生前整理をスタートさせたのは3年前ですが、生前整理のご依頼は年々増えていて、遺品整理と比べると7:3くらいの割合になっているんですよ。
コロナ禍による、断捨離®の影響もあるかもしれません」
--「思ったよりも多かったです。意識が高くなっている証ですね。
では具体的に、生前整理がなぜ防災や防ケガになるか、教えてください」
家具が直撃・逃げ道をふさぐ…散らかっている家には危険がいっぱい
引用元:https://www.photo-ac.com/profile/1108445
--「部屋が片付いていないことで、災害時や平常時、どんなデメリットがあるのでしょうか?」
松下「事例を挙げますと、まずは有名な例では、阪神・淡路大震災。
家屋の損傷や倒壊が原因で亡くなった方は、8割といわれています」
--「そんなにも……。関東大震災では火災でしたが、こちらでは倒壊」
松下「家具の下敷きで命を落とされた方も多いんですよね。
寝室の枕元にタンスがあって、身体に直撃されるケースはもちろん、家具が倒れることで逃げ道がふさがれるのも理由なんです」
--「逃げ遅れてしまう!」
松下「中には、大きな家具が倒れた先にガラステーブルがあり、それが割れて歩けないというケースもあります」
--「身体に直撃することに加え、『家具が倒れて逃げ道がふさがれる』という二次被害がポイントになるんですね」
松下「そうなんですよ。
同じ理由で、延長コードが部屋の真ん中を通っていたり、玄関までの道のりに壺や置物といったわれものがあるのも危険です。
阪神淡路大震災の際には、オフィスビルでキャスター付きのコピー機が窓を突き破り、道路に落下したという例もあります」
--「考えただけで恐ろしい…。
延長コードにはカバーを付けたり、通路には壊れものを置かないことが大切なんですね」
松下「加えて、災害はいつ起こるかわかりません。
真夜中だったり、停電で何も見えない場合、床にものがあるだけで命取りになります」
--「懐中電灯を探している間に逃げ遅れる場合もありそうです。
恐る恐る進むのと、さっさと進むのとでは差が出ますし…。
ということは、防災を考えておけば、自然と『防ケガ』にも繋がるということでしょうか」
松下「その通りです!
生前整理の必要性がおわかりいただけたところで、対処法をお伝えしますね」
防災面の生前整理のメリットは「動線確保」「つまづかない」「防災意識の向上」
引用元:https://www.photo-ac.com/profile/43626
--「生前整理=防災と防ケガということをまとめると、ポイントは?」
松下「3つありますね」
- 動線が広くなる
- 床にモノを置かないことで通路を確保
- 防災意識が向上する
です。その上で気をつけたいのが、家具の配置です!」
--「例えば、寝室にはタンスを置かない、などでしょうか?」
松下「ええ。ただし置き方さえ考えれば可能なんですよ。
ポイントは『通路を塞がず、ベッドと並行に』です」
--「なるほど。並行に置けば頭上には倒れませんもんね」
松下「あまり知られていないのですが、気をつけたいのは引き出しや中身なんです。
家具そのものは耐震対策をしていても、引き出しや中身が出てしまう。
その可能性も見据えて、ベッドと向かい合わせではなく横に置くことが大事です」
ーー「それは盲点でした…」
松下「実は最近、タンスを持っている人は減っていて、生前整理でも『処分したい家具ベスト1』なんですが、それより注意したいのが本棚です」
ーー「確かに…」
松下「横置きすればまだいいのですが、本棚は大きいので、通路になるところには置かないようにしたいですね」
--「イメージでは『背の高いものは置かない』とか『家具に耐震グッズを付けていれば大丈夫』でしたが、違うんですね…」
松下「それから、突っ張り棒などで家具を固定している方がありますが、タテ揺れだと天井を突き破ってしまいます。
ないよりはマシですが、長ければ長いほど効果も薄れるので、オススメしません。
それよりは、ワイヤーやLG型の金具を用いて、壁に穴を空けてしっかり固定しましょう」
--「なおかつ、中身が飛び出ない工夫もしておくこと」
松下「はい。余談ですが、お水や食糧といった防災備蓄用品も、キッチンや寝室ではなく玄関に置くことがオススメです!」
--「経験がないと防災対策も的外れになってしまうので、とても参考になりました」
まとめ:定期的に断捨離®を!
--「今回は、現場での経験や、今学んでいらっしゃるという防災士の専門知識も併せて、とても勉強になりました。生前整理は防災の上でも大切なんですね」
松下「ええ。生活の質を上げる目的だけでなく、安全面でも定期的に断捨離®をして欲しいですね」
--「部屋が散らかっていることで快適さがなくなる上、防災面でもデメリットがあるということですよね。
これまで大橋運輸さんにお願いした方の感想などは届いていますか?」
松下「皆さん、生前整理をされた後に『うちってこんなに広かったんだ!』っておっしゃいます。
広くて快適で、モノが少ないから探す時間も短縮でき…過ごしやさが実感できるので、キープしたいと思われるようです」
--「確かに、二度と戻りたくないと感じるでしょうし、出したらしまう動線もプロが作ってくださるので、片づける習慣も身に付きそう」
松下「そういっていただけると嬉しいです。
定期的な断捨離®は、先程もお伝えしたように、防災意識を高めることにも繋がりますからね」
--「やはりご依頼は年齢層的に上の方が多いのですか?」
松下「そうですね。やはり60代の方が多いですが、生前整理は暮らしを快適にするためのものなので、何歳でも早すぎるということはありません!」
--「片づけていない家で、こんなに危険が多いとは気づきませんでした…。
私もまずは床にモノを置かないよう、気をつけたいと思います」
トップページ画像引用元:https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=acworks&area=1
取材:「綴屋」ライター/増田有香(https://tsuzuriya.jp/)